2021.10.09
2021/10/9 スポーツ庁、ゴルフ場利用税のあり方の見直しを要望
スポーツ庁は文部科学省の令和4年度税制改正要望として、8月末に「ゴルフ場利用税のあり方の見直し」を総務省に提出した。前年の令和3年度税制改正要望では「ゴルフ場利用税の在り方の見直し」が文科省として1番目の要望であったが、4年度は一部表現や説明を変更しただけの実質的に同じ要望となったこともあるのか、「博物館の機能強化を図る法改正に伴う税制上の所要の措置等」などに次ぎ最後の4番目の要望となった。
3年度要望では年末の与党税調で認められなかった。2度目の要望でどう変化するのか注目される。
4年度の要望内容は、〝スポーツを行う際に、唯一ゴルフのみに課税されている「ゴルフ場利用税」について、その在り方を見直すことが必要〟(関係条文地方税法第75条等)とし、前年の〝スポーツを行う中で唯一ゴルフのみに課税されている「ゴルフ場利用税」の在り方を見直すことが必要〟の表現を変更した。
以下はほぼ前年と同様で、要望理由の政策目的は「スポーツの中で唯一、ゴルフにのみ課税されている状態であり、他のスポーツと同様に課税対象とすることなく、公平に行える環境を整えること」。「施策の必要性」として、従来から主張しているスポーツ基本法(平成23年法律第78号)で定めた国民の権利【スポーツ基本法との関係】や【生涯スポーツ社会の実現】、【オリンピック憲章に基づく差別の解消】の相当性を挙げた。
また【一般財源となる税制度との関係】ではゴルフ場利用税は、その税収が地方公共団体の一般財源となり、地方税法上、税収の使途はゴルフ振興に限定されておらず、例えば、ゴルフの振興を通じた地域振興の好循環に誘導できないこと。【ゴルフを取り巻く社会状況の変化への対応】としてゴルフが2016年のオリンピック競技大会リオデジャネイロ大会から正式競技に復帰するなど競技スポーツとして国内的・国際的にも広く認知されている一方、ゴルフ人口が半数近く減少し、ゴルフ場も閉鎖していることから、ゴルフ場の閉鎖を防止しゴルフ場を活用した地域の振興を図るとともに、ゴルフ人口の増加の方策を検討する必要がある。【地方自治体と共同して行う、ゴルフ振興策の検討・実施】も挙げた。
政策体系における位置付けとして、スポーツ庁の政策目標である〝スポーツの振興。スポーツを「する」「みる」「ささえる」スポーツ参画人口の拡大と、そのための人材育成・場の充実〟のために、ライフステージに応じたスポーツ活動の推進とその環境整備を行うことを挙げた。
ゴルフ場利用税見直し要望の対象は6665万1577人、対象施設2229施設(総務省令和元年度調べ)。平成15年度のゴルフ場利用税の一部非課税措置の導入以来、非課税措置適用者は約411万人(平成15年度)→約1932万人(令和元年度)に、総利用者数に占める割合は4・6%→22・47%に増加し、ゴルフ場利用税の見直しはゴルフ場利用者の増加に効果があり、スポーツ実施率の向上及びゴルフの振興につながると考えられる。
ゴルフ場利用税が廃止された場合、ゴルフのプレー回数増やゴルフ用品の購入など、廃止分をゴルフ関係に活用すると回答したゴルファーは85%であった(ゴルフダイジェスト・オンラインによるアンケート調査(平成28年度実施))も紹介し、非課税化による一層のゴルフの振興が期待されるとした。
また文科省が実施するスポーツ参画人口の拡大等の令和2年度予算は20億円余でその環境整備の取り組みとともにゴルフ場利用税見直しを行うことを通じたゴルフプレーの人口の増加により、スポーツ参画人口の拡大に寄与し、究極的な目標としての生涯スポーツ社会の実現をさせるものであるとまとめている。
その他、平成元年4月の消費税創設時に廃止された娯楽施設利用税のうち、スポーツの中でゴルフ場の利用にのみ課税が存続し、消費税との二重課税と指摘。ゴルフ場利用税の税負担軽減措置等は令和元年度で1931万8千人の非課税税利用者がおり、減収額実績は124億99百万円とも算定して紹介した。
ちなみに平成元年度に「ゴルフ場利用税」と改称され、15年度に18歳未満や70歳以上等の非課税措置が規定された。同省では税制改正要望で廃止を要望し、平成29年度から31年度は税調の審議対象となるも「今後長期的に検討する」にとどまった。このため令和2年度は30歳未満と65歳以上等の非課税措置の拡充に要望を方向転換したが、実現したのは①オリンピックを含む、国際競技大会出場選手、②公式練習時の国体競技参加選手の非課税措置にとどまった。
スポーツ庁の〝スポーツ立国の実現を目指したスポーツの振興〟の令和4年度概算要求額は、429億64百万円で3年度予算より75億81百万円上回っている。
スポーツ庁では「具体的な要求内容はこれから詰める」方針。実質的に「廃止」を主張したいが地方財政を考慮して撤廃できないとなると、結局は国の予算をかけるしかなく、2年度のような年齢基準か、ないし消費額か、それとも地域振興に生かす枠組みを考えるかになりそうだ。