2023.02.22
2023/2/22 甲府地裁、山中湖県有地に係る訴訟で県の訴え退ける
山梨県が富士急行㈱に貸している県有地の賃料が不当に安いとして、県が損害賠償等請求訴訟を提起した訴訟で甲府地裁(新田和憲裁判長)が12月20日に県の提起を全面的に退ける判決を下した。
県は富士急行が支払ってきた賃料が安かったとして独自に算定した「適正賃料」との差額や損害賠償の一部として、約93億円の支払いを求めていた。
富士急行の説明によると、同社は山梨県南都留郡山中湖村他所在の山梨県有地につき、県より、昭和2年以降90年以上にわたり、賃貸借契約を締結して借り受けた上で、別荘地開発等を行ってきた。同賃貸借契約に関し、同社は県自らが定めた手続に則って決定された賃料を受諾し、一定期間ごとに行われた改定にも応じ、これを支払ってきたという。ところが県は2020年8月以降、突如としてこれまでの主張を翻し、土地賃貸借契約が違法無効だなどと主張するに至ったという。
これに対し同社は〝過去の賃料は、県自らが定めた手続に則り、適正な手続に基づいて定められてきた〟、〝賃貸借契約は適正な手続に則って連綿と締結されてきた〟として、21年3月1日に賃借権確認請求訴訟を起こした。
これに対し、県は同年7月9日、これらの訴訟に関連し、同社が県に損害を与えているものとして、反訴を提起し、今回の判決となったという。
20日の判決は、「本件請求をいずれも棄却する。訴訟費用は山梨県の負担とする」というものだった。
今後について同社は、〝本件訴訟の当初より、本件土地に係る賃貸借契約の賃料は適正なものであり、また、その決定手続についても県のルールに従って公正なプロセスを経ている旨主張してまいりました。今回の判決は、このような当社の主張を踏まえたものであり、当然の結果であると認識しております〟と説明。また一方で、県は〝これまで自らが決定した賃料を当社に請求していたという従前の経緯を顧みることなく、本件訴訟においては、従前の賃料が適正な対価と比較して著しく低廉であるため賃貸借契約が違法無効であり、当社が県に対して差額分を支払う債務を負う旨の主張をしていました。本来地域経済の活性化を担う地元企業を支援すべき立場にある県が、自ら決定した賃料を過去に遡って覆す主張をすることは、今後の地元企業、ひいては県民の活動に大きな懸念を抱かせるものであります〟ともアピールしている。
報道も各社行っており、裁判の争点は賃料で、これまで賃料は別荘地が造成される前の山林原野の状態(素地価格)を基礎に算定されてきたが、県は造成後の現状を基礎に算定すべきだったと主張したという。これに対し判決では、素地価格を基礎として、直近に合意した賃料をもとに新たな賃料を決める「継続賃料評価」で算定されていたことなどから、その評価が「不当ということはできない」と判断したという。
そもそも同問題は、山梨県南アルプス市の男性が富士急への賃貸料が不当に安いとして県を訴え、県は鑑定結果により「賃料は約6倍の年間20億円が適正」として20年8月に県有地の賃料見直しに方針転換したことから訴訟に発展していた。